2004/09/25 Saturday
■ 奥田英朗/
空中ブランコ(奥田 英朗)
伊良部総合病院の地下にある神経科の伊良部のもとにスランプや強迫症に陥った患者が訪れる。5編の短編に5人の患者が登場する。空中ブランコ芸人、やくざ、医者、野球選手、作家。それぞれ心の病に悩まされたあげく伊良部と会うのだが、伊良部は「5歳児のようだ」と言われる様な人物。いずれの患者も伊良部に振り回されるのだが最後には立ち直っていく。
ある集団に着目すると、不思議と役まわりは、だいたい揃っているような気がする。「指導的な人」「盛り上げる人」「遊んでいる人」「勝手に行動する人」など。ある程度人数が集まれば確率的にそうなるのか、集団ができた時点から分化していくのかわからないが。その中でも「和ませ役な人」がいると思う。そういう人は集団がうまくいく為には必要な人材だ。他人を和ませる人というのは、本人にその自覚がある無しは別として、ある意味ですごい才能を持った人だ。本書の伊良部先生はそれに特化した人材で、徐々に心を開いていって治癒していく患者を見るのは気持ちがいい。もちろん、伊良部の奇行自体もおもしろいが、本書の読後感の良さはそういう意味で自分が和めるところにある。
本書は、第131回直木賞(2004上半期)受賞作という事で読んでみたのだが、伊良部シリーズ前作として「イン・ザ・プール」がある。是非読んでみたい。
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